趣旨説明を行う大島議員

 衆院安保特別委員会で8日夕、民主・維新両党が同日共同提出した「領域等の警備に関する法律案」の提出者を代表して民主党の大島敦衆院議員が趣旨説明を行った。

 日本の離島等で海上保安庁など警察機関の手に余る武装漁民等による侵害事案など、自衛隊による対処を余儀なくされる事態が現実的かつ切実な脅威として想定されている中で、これら武力攻撃に至らない事態、いわゆる「グレーゾーン事態」が生じたとき、自衛隊が治安出動または海上警備行動で対応するには現行法上次の3つの隙間があると大島議員は指摘した。(1)治安出動や海上警備行動はその都度閣議による決定を経なければならず、一定の時間を要するため、この間に事態が悪化するおそれがある(2)治安出動や海上警備行動の発令に至るまでの間は、たとえ近辺に警察官や海上保安官がいないなど警察機関による対応が困難な場合であっても、自衛官は不審者に対して警察官や海上保安官が行うことのできる立ち入り検査や犯罪の制止などの行為を行えない(3)自衛隊法95条に定める武器等防護など例外的なケースを除いては、たとえ正当防衛・緊急避難の事態であっても、法律上、自衛官に武器使用の権限がない――。

趣旨説明を行う大島議員

趣旨説明を行う大島議員

 大島議員は、こうした「時間」「権限」「武器使用」の3つの隙間を埋め、シームレスな対応を可能にすることこそが、国民の生命・財産、わが国の領土・領空・領海を確実に守るためには何より必要なこと」だと強調。こうしたグレーゾーン事態に対して政府は「電話閣議の導入」などの運用改善を表明するにとどまり、現在審議されている安保関連法案では何ら法的な手当てがされていないことから、「真に現実的な安全保障政策を追求する姿勢にもとづき、『近くは現実的に』の観点から、これら3つの隙間を埋めるために明確な法律的な裏付けが必要だ」と本法案提出の理由を述べた。

 法案の概要に関しては下記9項目を挙げた。

  1. わが国の領海、離島等での公共の秩序の維持は、警察機関で行うことを基本としつつ、警察機関では公共の秩序を維持することができないと認められる事態が発生した場合には、自衛隊が、警察機関との適切な役割分担を踏まえて、当該事態に対処すること等の原則を定める。
  2. 政府は、領域等の警備に関する基本的な方針を定めるとともに、警察機関の配置の状況や本土からの距離等の事情により不法行為等に対する適切な対処に支障を生ずる高い蓋然性があると思われる区域を領域警備区域に定め、いずれも国会の承認を求める。
  3. 領域警備区域での公共の秩序を維持するため、自衛隊が、情報の収集、不法行為の発生予防及び対処のための「領域警備行動」を行うことを可能にするとともに、これら自衛隊の部隊に対し、平素から警察官職務執行法及び海上保安庁法上の権限を付与する。
  4. 治安出動又は海上警備行動に該当する事態が発生する場合に備え、あらかじめ領域警備基本方針及び対処要領を定めておくことにより、あらためて個別の閣議決定を要せずにこれらの出動が下令できるようにする。
  5. 領域警備区域での公共の秩序維持、船舶の衝突の防止のために特に必要があると認めるときには、当該区域の特定の海域を航行する船舶に対する通報制度を設け、必要に応じ立ち入り検査を行うことができることとする。
  6. 政府は、船舶及び航空機の偶発的な衝突等の不測の事態の発生を防止するため、各国政府との間で、関係行政機関相互間の意思疎通と相互理解の増進、安全保障の分野での信頼関係の強化及び交流の推進、緊急時の連絡体制の構築等の措置を講ずるように努める。
  7. 領域警備区域以外の区域についても、国土交通大臣から要請があった場合には、自衛隊の部隊は、一定の権限をもって海上保安庁が行う警備の補完をすることができることとする。
  8. 領域警備の関係機関が情報を共有しつつ、相互に適切に連携を図りながら協力することを確保するため、領域警備事態連絡調整会議を置く。
  9. 自衛隊法を改正して、防衛大臣が自衛隊の部隊に対し警戒監視の措置を講じさせることができることとする。