司会を務める津田弥太郎参院議員

司会を務める津田弥太郎参院議員

 民主党は19日夕、「派遣労働を考えるシンポジウム」を国会内で開いた。政府の審議会がまとめた労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の改正に関する報告の問題点を派遣労働の現場の意見なども交え明らかにするねらいで党厚生労働部門が主催し、厚生労働省職業安定局の富田望派遣・有期労働対策部需給調整事業課長、日本労働組合総連合会(連合)の新谷信幸総合労働局長、派遣労働者を組織する派遣ユニオンの関根秀一郎書記長、最近派遣切りを受けた女性の派遣労働者をパネリストに迎えて議論を行った。

あいさつする大畠章宏幹事長

あいさつする大畠章宏幹事長

 大畠章宏幹事長が冒頭あいさつし、「民主党政権時代について反省点はあるが、一つ一つの足跡は国民の皆さんの意見をいただきながら歩んできた。雇用の安定がなければ生活の安定も得られないし、生活の安定がなければ社会の安定もない。こういう観点から一生懸命取り組んできた。いま、3本の矢を射れば日本はよくなると総理は言うが、その陰で労働環境が悪化している。ぜひ生の声をお聞きしたい」と議論を呼びかけた。

あいさつする山井和則厚生労働部門座長

あいさつする山井和則厚生労働部門座長

 シンポジウムを主催した山井和則厚生労働部門座長は、「一昨日の予算委員会の質疑で安倍総理は『派遣労働者を増やすべきとはまったく考えていない』と答弁したが、今回の法改正は、派遣を使い勝手よくする法案であるのは誰の目にも明らかだ。田村厚生労働大臣も『雇用の安定と処遇の改善を図るための改正案だ』と言う。もし、そういう法案に抜本的に修正すると言うなら私たちも乗れる。しかし、雇用が不安定になりかねない、派遣労働者も増えかねないという法案なら断固として阻止しなくてはならない」と力強く訴えた。

厚生労働省職業安定局の冨田課長

厚生労働省職業安定局の冨田課長

 パネリストの富田課長は、労働者派遣制度の見直し案のポイントを(1)これまでは許可制と届出制に分かれていたが、今後はすべての労働者派遣事業を許可制にして業界を健全化する(2)これまで専門的な26業務は期間制限なし、その他は原則上限1年、過半数組合等への意見聴取により上限3年まで延長可能だったが、今後は26業務か否かに関わりなく同一の事業所への継続した派遣労働者の受け入れの上限を原則3年、過半数組合等への意見聴取により延長可能とし、派遣労働者個人については派遣先の同一の部署への派遣の上限を3年とする(3)派遣労働者の正規社員との均衡待遇の推進のための派遣元、派遣先の説明や配慮の義務を強化(4)派遣労働者のキャリアアップのため派遣元に計画的な教育訓練やコンサルティングを義務づける等の規定を新設――と説明した。

連合の新谷総合労働局長

連合の新谷総合労働局長

 新谷局長は今回の見直し案について「どう考えても派遣業界寄りの内容。昨年の参院選が終わるのを待って、政権の強い政治的圧力の中で出されたもの。派遣制度自体は世界的にある制度だが、世界に共通するルールは、派遣という働き方は雇用と使用が分離するためにどうしても不安定になることから、あくまでも臨時・一時的なものだということと、もう一つは正規雇用労働者との均等待遇原則だ。見直し案は、この二つとも骨抜きにするもので、連合は審議会の中で反対意見を付けた。国会審議でぜひ法案修正に取り組んでほしい」などと述べた。

派遣ユニオンの関根書記長

派遣ユニオンの関根書記長

 関根書記長は、組合が実施した派遣労働者へのアンケートの結果を示して「平均時給額は1994年の1704円から2013年の1339円までどんどん低下していて、昨年の年収では300万円未満が68パーセント、圧倒的多数が『生活が苦しい』と回答している。契約期間は1カ月から6カ月という、いつでも切り捨てられるような形が半数を超える。多くはできれば正社員として働きたいが、派遣で働かざるを得ないのが現状だ。企業は恒常的業務に派遣をどんどん導入している。今はまだ業務に応じた期間制限で歯止めがかかっているが、改正されれば3年ごとに労働者を差し替えればずっと派遣で対応可能になる。何としても反対して食い止めていかなければならない」と訴えた。

24年間働いた派遣先で派遣切りにあったAさん

24年間働いた派遣先で派遣切りにあったAさん

 実際に派遣で働いてきた女性Aさんは、「一つの会社に24年間ずっと派遣され働いてきた。契約形態は最初は派遣、その後は別の派遣元の偽装請け負いだったり、また別の派遣元からの派遣に変わった。最初の1年は半年契約で、あとの23年は3カ月などの細切れ契約。最近はやりの『追い出し部屋』を作り社員を追い詰めている大企業のグループ企業で、リストラを間近で見てきた。24年間働いたが、一昨年、契約が切れる1カ月前に『これで終わりです』の一言でクビになった。24年間、派遣だからと無責任な仕事をしてきたつもりはない。今回の見直しは、ブラック企業を後押しし、働くものを使い捨てにするものとしか思えない。もっと真剣に議論してほしい」などと切々と訴えた。

派遣先企業の団体交渉応諾義務が不明確だと指摘する全国ユニオンの渡辺秀雄事務局長

派遣先企業の団体交渉応諾義務が不明確だと指摘する全国ユニオンの渡辺秀雄事務局長

 シンポジウム参加者も交えた意見交換で、Aさんの事例についての見解を求められた厚労省の冨田課長は「非常に胸が詰まるような話だ。違法行為が多いように思う。派遣先も悪いが、悪質な派遣会社だ。派遣元がしっかりしていないのは一番悪い。今後は行政処分なども厳しく行っていきたい」などと述べ、派遣法の改正でさらに問題が拡大するとの見方には同意しなかった。参加者からは「2008年のリーマンショック後の『年越し派遣村』の取り組みなどを経て、それまでの派遣緩和の流れへの見直しの声が高まり、民主党政権下の12年に派遣法を改正したが、今回の見直し案はそれにまったく逆行するもの」「均等待遇の原則を盛り込むべき」という意見や「派遣先企業の団体交渉応諾義務が明確化されていない」という指摘などが出され、法案の国会審議で徹底した議論と修正を求めていくことを確認した。

PDF「派遣労働シンポジウム次第」派遣労働シンポジウム次第

PDF「派遣労働シンポジウム山井座長資料1」派遣労働シンポジウム山井座長資料1

PDF「派遣労働シンポジウム山井座長資料2(厚労省への質問回答)」派遣労働シンポジウム山井座長資料2(厚労省への質問回答)

PDF「派遣労働シンポジウム厚生労働省資料」派遣労働シンポジウム厚生労働省資料

PDF「派遣労働シンポジウム連合資料」派遣労働シンポジウム連合資料

PDF「派遣労働シンポジウム派遣ユニオン資料」派遣労働シンポジウム派遣ユニオン資料