公務員制度改革の目的は、これまで縦割りで閉鎖的といわれてきた官僚組織を効率的で透明なものへと改めるとともに、有能・多様な人材を登用することによって、国民の期待に的確かつ迅速に応える質の高い行政サービスを提供することにある。またそのためには、公務員が誇りとやりがいをもって職務を遂行することができるよう、労働基本権の付与をはじめとして、まじめに働く者がきちんと報われるような職場環境を整備することも重要である。
これらの観点から民主党は2009年の衆議院選挙マニフェストで「公務員制度の抜本改革」と題し、(1)08年の自公政権当時に成立した国家公務員制度改革基本法に基づき、内閣一元管理による新たな幹部職制度や能力・実績に応じた処遇の実施(2)国家公務員の天下りあっせんの禁止(3)国家公務員総人件費を2割削減(4)公務員の労働基本権の回復――等の内容を提起した。
国家公務員制度改革関連4法案提出まで
このマニフェストを踏まえて11年6月、当時の菅内閣は国家公務員制度改革関連4法案(「国家公務員法等の一部を改正する法律案」「国家公務員の労働関係に関する法律案」「公務員庁設置法案」「国家公務員法等の一部を改正する法律案の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」)を国会に提出した。
法案の具体的な内容は(1)幹部人事の一元管理など人事制度の改革(2)退職管理の一層の適正化(3)自律的労使関係制度の措置――の三つが柱。
4法案の提出に至る過程では、基本法第12条(「全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置する」)の趣旨も踏まえて、「自律的労使関係制度に関する改革素案」の公表(10年12月)、「自律的労使関係制度の措置に向けての意見募集(パブリックコメント)」の実施(10年12月~11年1月)、「国家公務員制度改革基本法等に基づく改革の『全体像』について(国家公務員制度改革推進本部決定)」の公表(11年4月)といった国民に開かれた手順が踏まれた。
幹部人事の一元管理など人事制度の改革
縦割り行政の弊害を排除し、府省横断的な人材の活用や多様で優秀な人材の登用・育成を行えるよう、今回の法案では、採用から幹部までの各段階に応じた人事制度の改革を行うこととしている。改革の主な内容は次の通り。
- 幹部職員(事務次官、局長、部長等)について、官邸主導で適材適所の人材を登用するため、幹部人事の一元管理の仕組み(任命権者は「適格性審査」を経て幹部候補者名簿に記載された者の中から内閣総理大臣・官房長官との協議を経て幹部職員を任命)を導入し、それを担う組織として「内閣人事局」を設置。また、事務次官級から部長級までを同一の職制上の段階に属するものとみなす弾力化措置を実施。
- 管理職員(課長、室長等)について、内閣総理大臣が任用の統一的な指針の作成、運用の管理、府省横断的配置換えの調整等を実施。
- 管理職員の職責にふさわしい能力・経験を持つ職員を政府全体で総合的・計画的に育成するため、幹部候補育成課程を整備。各府省は内閣総理大臣が定める統一的基準に従ってこの課程を運用する。
- 多様な人材を公務に登用するとともに、多様な職務経験を付与することで職員を育成していくため、内閣総理大臣が官民人材交流の指針を策定するとともに、官民人事交流法に規定する人事交流について対象法人の拡大、手続の簡素化、透明性の向上を図る。

天下りあっせん禁止をいっそう厳格に監視
民主党政権発足後直ちに府省庁による再就職あっせんを内閣の方針として禁止するなど厳しく取り組んできたが、法案では退職管理の一層の適正化を進めることとした。
具体的には、新たに「再就職等監視・適正化委員会」を設置し、従来の再就職等監視委員会の機能に加えて、任命権者に対して再就職規制の遵守のために指導・助言を行う権限を付与することで、監視機能を強化することとした。
また、現行の官民人材交流センター(国家公務員の再就職援助を一元的に実施)を廃止し、再就職援助については、組織の改廃等に伴い離職を余儀なくされる職員の離職に対する援助に限定して、必要が生じた場合にのみ内閣総理大臣(公務員庁)が実施することとしている。
自律的労使関係制度の措置
現行制度では、非現業の国家公務員の労働基本権は制約されており(団結権は認められ、交渉もできるが、団体協約の締結権はなし)、給与等の勤務条件の決定については、労働基本権制約の代償措置として「人事院の勧告」に依存している状況にある。
今後、新たな政策課題に迅速に対応し、効率的で質の高い行政サービスを提供していくためには、労使が勤務条件について真摯(しんし)に向き合い、当事者意識を高め、自律的に勤務条件を決定できる仕組みに変革し、時代の変化に対応して、主体的に人事・給与制度の改革に取り組んでいくことが必要となる。また、職員も、勤務条件の決定プロセスに参加し、相応の責任を負って、自らの働きぶりに対する国民の理解の下に勤務条件を決定していくことが必要である。

このため法案では非現業の国家公務員に当局(使用者)との団体協約の締結権を新たに付与し、労使が団体交渉を通じて自律的に給与等の勤務条件を決定することができる自律的労使関係制度を措置することとされている。その概要は次の通り。
- 非現業の国家公務員(警察職員、海上保安庁・刑事施設に勤務する職員等を除く)に団体協約締結権を付与し、団体交渉の対象事項、当事者及び手続き、団体協約の効力、中央労働委員会による紛争調整(あっせん、調停、仲裁)の手続き等を規定。
- あわせて、人事・給与制度全般を所掌し、中央での団体交渉を行うとともに、行政機関の機構・定員・運営等に関する事務を一体的に担う組織として、新たに「公務員庁を」設置。
- 給与、勤務時間等の勤務条件及び交渉手続等の労使関係事項を団体交渉の対象事項とし、公務員庁は政府全体で統一的に定める俸給月額等について、各府省は府省ごとに定める勤務時間の割振り等について団体交渉を行い、団体交渉の議事要旨や団体協約の内容を公表。公務員庁と各府省には、団体交渉の内容を反映した法律案の国会提出、政省令の改廃等を義務付ける。
- 非現業国家公務員への協約締結権の付与と公務員庁の設置に伴い、現行の人事院勧告制度と人事院を廃止し、人事行政の公正の確保を図るため、不利益処分に関する不服申立ての処理等を実施する第三者機関として、新たに「人事公正委員会」を設置する。

法案の成立にむけて
国家公務員制度改革関連4法案の国会提出と同じ日に、政府は「給与臨時特例法案」を国会提出した。これは民主党マニフェストの国家公務員総人件費2割削減方針を踏まえるとともに、わが国の厳しい財政状況と東日本大震災に対処する必要性を踏まえて、2013年度末までの間、国家公務員の給与を平均7.8%引き下げるもの。
これら国家公務員制度改革関連4法案と給与臨時特例法案は、現在継続審議となっているが、引き続き野党に協力を呼びかけ、成立にむけて努力を続けていく。
(プレス民主2月17日号より)