野田内閣と民主党は、一般会計の総額が90兆3339億円の2012年度予算政府原案をまとめ、12月24日に閣議決定した。1月下旬に召集される国会に政府予算3案(一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算)として提出する。

日本再生重点化措置に1兆円

 一般会計予算では、「日本再生重点化措置」として、わが国の経済・社会の再生、国民一人ひとりが希望を持って前に進める社会を実現するため、(1)新たなフロンティア及び新成長戦略(科学技術・エネルギー・海洋・宇宙等インフラ整備を含めた成長基盤の強化策)(2)教育(スポーツを含む)・雇用などの人材育成(3)地域活性化(新たな沖縄振興政策を含む)(4)安心・安全社会の実現―の4分野に1兆円規模の予算を重点的に配分、その財源は概算要求や予算編成過程での既存経費の徹底した組み替えや歳出削減によって捻出(ねんしゅつ)した。

提言型政策仕分けを踏まえた歳出の徹底した見直し

 政府の行政刷新会議が昨年11月に実施した「提言型政策仕分け」の提言等を最大限反映し、歳出の徹底した見直しを行ったことも予算の大きな特徴だ。

 その例としては、医療の診療報酬本体を1.38%(5500億円)引き上げ(薬価等の1.38%引き下げで正味の増減は0.00%)、これを救急、産科、小児、外科等の急性期医療や地域生活を支える在宅医療の充実等に重点配分することを決めた。年金では、将来も持続可能な年金制度とするために、過去に本来行うべき引き下げを見送ったことによる特例水準を3年間で解消することとし、12年度はまず0.9%分を解消する。生活保護費急増の要因である医療扶助について、ジェネリック医薬品(後発医薬品=特許の切れた医薬品を別の製薬会社が製造し低い薬価で供給するもの)の利用促進等の指導を強化することとした(124億円の削減効果)。

 高速増殖炉の研究開発費も前年度比25%(102億円)削減、特に「もんじゅ」については要求額から40億円減額した。

2012年度一般会計歳出の構成

2012年度一般会計歳出の構成

公務部門の定員の大幅な縮減、庁費総額の抑制

 東日本大震災後最初の当初予算であり、また社会保障と税の一体改革を控えていることから、公務部門の無駄の徹底した削減にも取り組んだ。

 公務員の定員では、大震災関連で時限的に必要な増員や振り替え分を除き2018人削減(大震災関連等を含む全体でも1300人の純減)し、1969年に総定員法が制定されて以来初めて、すべての省庁で純増なしとなった。

 行政機関の行う事務・事業に必要な「庁費」にも大きくメスを入れた。庁費全体として総額を厳しく抑制(予算額3兆8898億円=対前年度1376億円の削減)した。特に事務に必要な備品費・消耗品費・光熱水料・機器借料などの庁費は過去30年間で初めて、全省庁・全特別会計を通じて前年度予算額を下回るよう厳しく抑制した(予算額2338億円=対前年度70億円の削減)。

 官庁の庁舎や公務員宿舎の建設経費も厳しく抑制した。合同庁舎の新規建て替え案件の予算は計上せず、一般会計の官庁営繕費は前年度比5.3%削減、うち継続案件の新営整備費は77%削減。財政投融資特別会計特定国有財産整備勘定の庁舎整備費(国土交通省官庁営繕部が実施する分)を4.4%削減した。国民から厳しい目が向けられている公務員宿舎については、新規建て替え案件の予算は計上せず、一般会計の公務員宿舎施設費のうち宿舎建設経費を71.5%削減、前述の特定国有財産整備勘定の宿舎整備費を4.3%削減した。

中期財政フレーム(歳出の大枠68.4兆円、新規国債44兆円)を堅持

 12年度一般会計予算は、市場の信認を確保するため、財政規律の堅持に最大限配慮するものとなっている。

 民主党政権は、10年6月に閣議決定した「財政運営戦略」で、経済・財政の見通しや展望を踏まえながら複数年度を視野に入れて毎年度の予算編成を行うための仕組みとして、「中期財政フレーム」の枠組みを導入した。11年8月に閣議決定した12年度から14年度を対象とする中期財政フレームは、歳入面では国債の新規発行額が「平成23年度(2011年度)当初予算の水準(約44兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる」、歳出面では「少なくとも前年度当初予算の『基礎的財政収支対象経費』の規模(11年度70兆8625億円)を実質的に上回らない」こと―を定めている。

 これに対し12年度予算では公債金からの歳入44兆2440億円(対前年度540億円削減)、基礎的財政収支対象経費68兆3897億円(対前年度2兆4728億円削減。ただし12年度の基礎年金国庫負担36.5%から2分の1への引き上げの差額分2兆5882億円は歳出予算とは別に、今後の税制抜本改革により確保される財源で償還される「年金交付国債(仮称)」で確保するため、実質的には11年度とほぼ同一規模)となった。

東日本大震災からの復旧・復興に全力で対応

 東日本大震災からの復旧・復興に関する経費については、復興に関する国の資金の流れの透明化や、復興債の償還を適切に管理するため、12年度から「東日本大震災復興特別会計(仮称)」を創設し、一般会計予算とは別に計上することとした。

 12年度予算では、災害救助等関係経費762億円、災害廃棄物処理事業費3442億円、公共事業等の追加5091億円、災害関連融資関係経費1210億円、地方交付税交付金5490億円、東日本大震災復興交付金2868億円、原子力災害復興関係経費4811億円、全国防災対策費4827億円、その他の東日本大震災関係経費3999億円、総額で3兆2500億円の経費を含む3兆7754億円の歳出を計上した。特別会計の歳入は、復興特別税5305億円、一般会計からの繰り入れ5507億円、税外収入118億円、復興債2兆6823億円を充てる。

子育て支援、農業再生、再生エネ促進、沖縄振興などさらに充実

 子ども手当の見直しに関する民・自・公の3党協議を踏まえ、新たに「子どものための手当(正式名称未定)」として給付総額2兆2857億円を確保。3歳未満と3歳以上から小学生の第3子以降の子ども一人につき1万5千円、3歳以上から小学生の第1子・第2子、中学生の子ども一人につき月額1万円、所得制限(夫婦・子ども二人で年収960万円を基準)以上の者については、中学校修了までの子ども一人につき月額5千円を支給する。

 待機児童解消に向け、約5万人増に対応する保育所運営費も確保した。

 高校授業料実質無償化は12年度も継続、小学校2年生以下の35人学級実現のための教職員定数改善を実現、低所得世帯(年収300万円以下)の学生等が、卒業後に一定の収入を得るまで奨学金の返済を猶予する「所得連動返済型無利子奨学金制度(仮称)」を創設するなど、民主党の目指すものを一つひとつ実現している。

 農業者戸別所得補償は引き続き6901億円確保、農地の集約も加速するなど、持続可能な力強い農業の実現を目指す。

 沖縄振興予算については、日本再生重点化措置も活用し前年度比3割増の2937億円、沖縄県から強い要望のあった一括交付金も前年度比5倍の1575億円を確保した。

 省エネや再生可能エネルギー導入の加速のため、エネルギー分野では次世代太陽光発電技術開発441億円、電気自動車等の購入等補助292億円、民生用燃料電池(エネファーム)設置補助90億円、事業者の省エネ設備導入補助343億円などを計上。また環境分野では地域の再生エネルギーや蓄電池等を利用した自立・分散型エネルギーシステム実施の導入を支援するための経費をグリーンニューディール基金として121億円計上した。

 地域主権推進のため、地方が自由に使える財源である一括交付金を前年比63%増の8329億円に拡充。都道府県だけでなく政令市もこれを使えるようにした。地方交付税も政権交代後の累計で1兆6343億円増とさらに増額する。

(プレス民主1月20日号より)