最高裁は3月、衆院の各都道府県の小選挙区数を定めるに当たり各都道府県の人口比と関係なく、まず「1」を配当することとしている、いわゆる「1人別枠方式」と、それに基づいて改定された現行選挙区割りについて、「憲法の投票価値の平等の要求に反するに至って」いるとし、同方式をできるだけすみやかに廃止するよう求める異例の判決を出した。以下、同判決の概略と制度見直しへの民主党の取り組みを紹介する。
判決は、最大2.304倍の「1票の格差」(投票価値の較差)の合憲性が争われていた2009年総選挙の選挙区割りに関する規定自体については「憲法上許される合理的期間内における是正がなされなかったとはいえ」ないとして、違憲無効の訴えをしりぞけたが、このまま現行方式を見直さずに放置すれば、選挙区割りやそれに基づく選挙結果が違憲と判断されることになる可能性もある。
10年の国勢調査では、小選挙区間の最大較差は2.524倍に拡大しており、調査結果をもとに選挙区画定審議会が各都道府県の定数を「4増・4減」(3都県で計4選挙区増、4県で各1選挙区減)する総務省案を検討していたが、判決を受けて審議は中断している。09年総選挙からすでに2年以上が経過した今、衆院選挙制度の見直しは待ったなしの状況を迎えている。
1人別枠方式とは
1人別枠方式を定めているのは、衆院選挙での小選挙区制導入を決めた1994年の公職選挙法改正と同時に成立した「衆議院議員選挙区画定審議会設置法」。もともと90年に出された第8次選挙制度審議会の答申では各都道府県の区域内の議員定数は人口比例により配分するものとされていたが、政府案は各都道府県への定数の配分について、まず1人別枠方式により、次いで人口比例により、小選挙区間の投票価値の較差が2以上とならないように定めることを基本とするものとした。
その理由について当時の細川総理は、「各都道府県への定数の配分については、投票価値の平等性の確保の必要性がある一方で、過疎地域への配慮などの視点も重要であることから、人口の少ない県に対して定数配分上配慮した」と国会で説明した。
同方式の合理性はすでに失われたとする最高裁判決
判決は同方式について、「新しい選挙制度を導入するに当たり(中略)人口の少ない県における定数が急激かつ大幅に削減されることになるため(中略)この点への配慮なくしては選挙制度の改革の実現自体が困難であったと認められる状況の下で採られた方策」と認めたうえで、「1人別枠方式は、おのずからその合理性に時間的な限界がある」「新しい選挙制度が定着し、安定した運用がされるようになった段階においては、その合理性は失われる」と説示。合憲性が争われた09年の総選挙時点ではすでに同方式の合理性は失われ、また、この方式が最大2.304倍の選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因になっていたと判断している。
民主党は2案を軸に定数配分見直しを提案
小選挙区比例代表並立制という現在の選挙制度を維持したうえで、1人別枠方式を廃止して小選挙区数300を人口比で機械的に配分するのが「21増21減」(10の都道府県で計21選挙区増、21の県で各1の選挙区減)案である。
衆議院選挙制度に関する各党協議会(10月19日の第1回会合)
しかし、この案では影響の及ぶ範囲がきわめて広いため、次の国勢調査までの激変緩和措置を求める声も強い。民主党は、政治改革推進本部で議論した結果、(1)1人別枠方式を廃止し、人口最小県の小選挙区数を2、都道府県間の投票価値較差を最大1.75(全小選挙区間の較差を最大2.0)となるよう調整する平岡秀夫衆院議員の案(2)「21増21減」案で小選挙区数が変更となる都道府県を減らすよう調整し都道府県間の較差を1.626に抑える石井一参院議員案―の2案を軸に検討を進めていくこととしている。
国会では現在、「衆議院選挙制度に関する各党協議会」(座長は民主党の樽床伸二幹事長代行)が設置され、選挙制度についての協議がスタート。選挙区画定審議会の勧告期限が来年2月下旬に到来(国勢調査の官報掲載から1年以内と法律で規定)することから、民主党は国会として早急な対応を図るよう各党に呼びかけている。
(プレス民主12月2日号より)